この記事で扱うこと
相関係数とは何か、分散効果がなぜ相関から生まれるのかは「分散投資と相関」の記事で扱いました。この記事は範囲を広げ、性格のまったく違う資産、つまり株式・債券・金・ドル・ビットコインが互いにどう結びついて動くのかを見ます。同じ株式の中の銘柄は似た理由で動きますが、資産クラスが違えば動く理由も違います。それでも、ある時期には一斉に上がったり下がったりし、ある時期には互いに逆へ動きます。その違いを生むのが、複数の資産に同時に影響する共通要因です。以下では代表的な共通要因と、相関係数を自分で測るときに数字をゆがめる落とし穴を順に整理します。
資産を一緒に動かす共通要因
多くの資産の価格に同時に影響する力は、いくつかにまとめられます。どの要因がその時期の市場を主導するかによって、資産同士の関係が変わります。以下の説明はよく使われる一般的な構図で、実際にどの程度当てはまったかは時期によって違うため、データで確かめる必要があります。
- 金利:債券価格は金利と逆に動く。金利が上がると将来の利益の現在価値が減り、株式、特に遠い将来の成長に頼るハイテク株が圧迫されると説明される
- リスク選好:人々がリスクを取ろうとするときは株式やビットコインのようなリスク資産が一緒に上がり、怖がるときは一緒に下がる傾向がある
- ドル:ドルが強くなると、ドル建ての金・商品や、ドル以外の資産のドル換算価格が押される傾向がある
- 物価:物価への不安が大きいときは、金利が上がって株式と債券が一緒に弱くなることがある
- 流動性:お金が供給されたり吸収されたりするとき、多くのリスク資産が同じ方向に動くことがある
株式と債券:関係の符号が変わる
株式と債券は分散の代表的な組み合わせとされますが、両者の相関は固定された値ではありません。景気減速が主な不安の時期には、株式が下がるとき金利が下がって債券価格が上がるので、両者は逆に動きやすくなります。逆に物価上昇が主な不安の時期には、金利が上がって株式と債券が一緒に下がることがあります。物価が大きく上がり金利が急速に上がった2022年に、米国の株式と債券がそろって大きく下落したのはよく知られた例です。そのため「債券は株が下がるときに上がる」という言葉は、ある時期の観察であって法則ではありません。相関係数を見るときは、全期間の値ひとつより、時期ごとの値がどう変わってきたかをあわせて見ます。
金・ドル・ビットコイン
金は利息や配当を生まないので、金利が上がると保有する機会費用が大きくなり、ドル建てで価格がつくのでドルの強さにも影響されるとよく説明されます。大きな不安が広がると金を求める需要が増えることもあります。ドルは世界の金融市場が揺れるときに強くなる傾向がよく語られ、ウォン建てで投資する人には特に重要です。リスク回避の局面でドル・ウォン相場が上がれば、ウォン換算した海外資産の損失が一部相殺されるからです。ビットコインは24時間取引され歴史も短いため、関係がより不安定です。ある時期にはハイテク株と似た動きをし、ある時期には独自の理由で別に動きます。ビットコインを「デジタルゴールド」か「ハイテク株のようなリスク資産」かのどちらかに決めつけるより、いまどちらとより近く動いているかを期間ごとに測るほうがよいでしょう。
相関は固定値ではない:ローリング相関
相関係数ひとつは、計算した期間全体を平均した値です。同じ二つの資産でも、どの期間を選ぶかで大きく変わるので、直近30日・60日のような一定の窓を一日ずつずらして計算し直したローリング相関もあわせて見ます。ローリング相関が0付近を上下しているならはっきりした関係はなく、一方に長くとどまるならその期間は関係が続いたということです。窓が短いほど標本が少なく値が大きく揺れるので、短い窓の急変をすぐに関係の変化と読まないようにします。下の図は、相関係数がどう生まれるかを示すために作った例です。
例:ランダムに作った三つの資産の80日間の価格(開始100)です。AとBは共通要因を大きく共有し、Cはその要因と少し逆に動くように作りました。日次リターンで測った相関係数は、AとBが0.86、AとCが−0.48です。価格の線が一緒に上がるから相関が高いのではなく、日々の変化が同じ向きである必要があります。
相関と大きさは別物
相関係数は方向がどれだけ同じだったかを示すだけで、どれだけ大きく動いたかは示しません。相関が1でも、一方が1%動くときにもう一方は3%動くことがあります。大きさまで見るにはベータを使います。ベータは共分散 ÷ 基準資産の分散で、相関係数 ×(その資産のボラティリティ ÷ 基準資産のボラティリティ)と同じです。そのため相関が中程度でもボラティリティが非常に大きい資産はベータが大きく出て、相関が高くてもボラティリティが小さければベータは小さくなります。ポートフォリオ全体の揺れを考えるときは、相関、各資産のボラティリティ、比率の三つが一緒に働きます。相関の低い資産でも、比率がごく小さかったりボラティリティが非常に大きかったりすれば、期待した効果と違うことがあります。
相関係数を測るときの落とし穴
相関係数は計算こそ簡単ですが、何をどう入れるかで数字が大きく変わります。以下は資産クラスを混ぜて比べるときに特によく起きる問題です。よそで見た相関係数と自分で測った値が違うなら、たいていこのどれかが原因です。
- 価格水準同士で相関を測ると、両方が上がるだけで高く出る。必ずリターンで測る
- 金利は価格ではないので、変化率ではなく変化幅(ポイント)で測る
- 取引終了時刻が違う市場(韓国の総合株価指数と米国の指数)は、同じ日付でも含む時間が違い、相関が低く出やすい。週次リターンにすると影響が減る
- 暗号資産は週末も取引されるので、株式と合わせると週末の動きが月曜の変化にまとまる
- 標本が少ない(期間が短い)と、偶然高い値や低い値が出やすい
- ウォン建てと現地通貨建てでは為替が入るため別の値になる
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このサイトの「ビットコイン vs 株式・金・ドルの相関」は、ビットコインやイーサリアムをナスダック・S&P 500・韓国の総合株価指数、金、ドル指数、米10年債利回り、WTI 原油、ドル・ウォン相場と比べ、直近30・90・180・365日の相関係数を棒グラフと行列で、選んだ資産との30・60個の変化のローリング相関をチャートで表示します。確定していない足は使わず、金利は変化幅で計算します。株式銘柄比較では、国内外の株式や ETF・指数・金・為替を最大5つ選んで、リターンの相関行列とベータ・年率ボラティリティ・最大ドローダウンを一緒に見られ、相関を日次と週次のリターンから選んで測れます。為替がリターンに与える影響は「為替が海外株のリターンに与える影響」の記事もあわせて見てください。
限界とお断り
相関係数は過去の期間に一緒に動いた度合いを要約した数字にすぎず、原因を教えてくれるわけでも、これからも同じ関係が続く保証があるわけでもありません。特に市場が大きく揺れる時期には、ふだんと違う関係が現れやすくなります。この記事の共通要因の説明はよく使われる一般的な構図で、すべての時期に当てはまるわけではありません。図は仕組みを示すための例で、実際の資産の記録ではありません。この記事は資産同士の関係の読み方を説明したもので、特定の資産配分を勧めるものではなく、投資助言ではありません。
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